自然の恵みに一番近い仕事だから考えること
現代の炭焼き職人、佐藤光夫さんにお話を伺うシリーズ①では、炭の作り方を、シリーズ②では、炭焼き職人になった経緯と、炭焼きについての思いを語っていただきました。
今回の③では、炭焼き職人として大切にされていることをお伺いしました。
–佐藤さんが大切にしていることや、心がけていることはありますか?
佐藤さん:山の緑を保ちながら続けていける炭焼きです。雑木林は適期に適度に伐ることで、萌芽更新によって若返ります。そして2、30年すれば再び炭を焼くことができ、自然を損ねることの少ない、天然自然の理にかなった営みです。
山の様々な木が、様々のまま生かされるよう、木のいのちを預かるような気持ちで、炭を焼いています。
特に、原木を割る仕事で、自分のからだの使い方について、考えることがよくあります。
仕事に限らず、体全体を使えていないと感じています。逆に言えば、多くは手足がでしゃばりすぎて、からだの他の部分が使えていないのだと思います。使えていない部分が使えるようになる、関わるようになれば、その作業、動作はずいぶん楽になるという実感があります。なので、日々工夫してみると、木を割る仕事は、自分なりにどんどん進化し楽になっている感もあります。
同様に、心や頭も、おそらく使えていない部分がかなりあるような感じがあります。
人間の脳もほんの一部しか使えていないという話を聞いたことがあります。もっと大風呂敷を広げるとすれば、同様に経済も然りだと考えています。是が非でも成長することが前提となっている現在の経済システムは、自然環境や安い労働力、格差など、その成長の糧のために犠牲になるものがあって、困ったことがたくさん出てきています。格差がないと、成長の糧となるものがないと、成長できない、回らないシステムになっています。
そんな中、自然を損なうことのない、あるいは少ない、使えていないエネルギー、いわゆる再生可能エネルギー(太陽光、水力、風力など)は、このシステムに大転換を及ぼすものだとも感じています。今、日本各地で、これらを基にして、地域の活性化が進んでいる地域が少しずつ増えています。
そんなことにも、たまには想いを馳せて、仕事をしています。時に広い視野に立つことも大事なことだなあと感じています。
【炭・連載④】につづきます
【炭・連載①】現代の炭焼き職人と奥深い国産炭の作り方 はこちら
【炭・連載②】大自然の営みの一部になる炭焼き職人の生き方 はこちら